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事例 : PDAを使用したデータ集録とFFT解析

背景

従来、被測定物を振動させて被測定物の周波数特性を測定する装置(以下、測定装置)において測定したデータのFFT処理・解析はマイコンで行っていました。しかし、計測精度を上げる必要がでてきたために、周波数分解能を上げる必要がでてきました。マイコンで実現する場合、処理能力が低いために解析処理時間が大幅に掛かるようになってしまいます。通常ならば、PC、ノートPC等を代用すれば済む話なのですが、今回の被測定物は屋外にあり、さらに広範囲に散在しています。ノートPCを持ち運ぶことは大変な作業になります。そこで代用品としてPDAに着目しました。LabVIEWにはLabVIEW PDAというアプリケーションがあります。LabVIEW PDAを使用して、データ集録、FFT解析を行えば単時間で解析が可能になると考えました。

課題

1)測定装置のマイコンとのシリアル通信。
2)計測データのFFT処理。
3)FFT波形のピーク検出処理。
4)FFT波形を表示。
5)計測データを保存。

ソリューション

1.ハードウェアシステム構成

(ア)測定装置本体

装置本体では、被測定物を測定し、測定終了後PDA側に測定データを送信します。PDA側の測定データの解析結果を受信したらブザー音とLEDの点灯でユーザに知らせます。本体の電源は専用の電池ボックスから供給されます。
初期動作としてPDAの電源をONにすると本体の電源が付き、パラメータ要求コマンドをPDAに送信します。PDAは要求コマンドが来ると、順番にパラメータを送信します。測定装置のマイコンに必要なパラメータの送信を終えると(ブザーを鳴らす)本体の初期化をユーザに要求します(ブザーを鳴らし、LEDを点滅)。
前回の装置ではマイコンが20kHzのサプリングレートで4092ポイントのデータを集録し、FFT処理を行っていました。この時の周波数分解能は4.88Hzでした。今回の装置では、0〜500Hz までの範囲の周波数特性を検査し、且つ、1Hzの周波数分解能を求められたので、8192Hzのサンプリングレートにしてデータ数を8192にしました。

 (前回)(今回)
サンプリングレート(Hz)200008192
サンプリングポイント数40968192
FFT周波数分解能(Hz)4.881
FFT周波数範囲(Hz)0〜100000〜4096

表1 集録条件・FFT処理の比較

(イ)データ解析・集録用PDA

PDAはHP社製HP iPAQ hx2410 Pocket PCを使用しました。PDAでは、装置本体のパラメータの管理・装置本体への送信、計測データの装置本体からの受信・保存、計測データの解析・結果表示・装置本体への転送、装置本体のステータス情報の受信・表示を行います。なお、PDAにはSDカードスロットがあるので、集録する計測データはSDカードに保存します。

以下にハードウェア構成を示します。

ハードウェア構成図
図1 ハードウェア構成図

2.ソフトウェア構成

(ア)データ集録・解析ソフトウェア

このソフトウェアの作成にはLabVIEW PDA Module For Pocket PCを使用しました。このソフトウェアでは、装置本体のマイコンのパラメータ管理、計測データの解析・判定、解析結果の表示、計測データの保存を行います。

[1]シリアル通信処理
PDAとマイコンの間は、RS-232Cで通信を行っています。通信速度は115200bpsで、通信時間を短縮する為に計測データはバイナリで送られてきます。データのサイズが約16.5kBなので、転送に掛かる時間は約1.4秒になります。
シリアルポートは、PDAの電源のON/OFFによってOPEN/CLOSEします。これを利用して測定装置の電源のON/OFFを行っています。測定装置は電源が入るとシリアル通信でPDAに対してパラメータの要求を行います。
[2]FFT処理
PCで使用する関数と演算結果は変わらずに、演算によるPDAへの負荷を抑えたFFT処理のサブVIを作成しました。このVIと後述する([3]ピーク検出処理)2つのVIの使用で、マイコンでは最大8秒ぐらいと予想された処理時間が約2秒まで短縮できました。
[3]ピーク検出処理
周波数特性の解析を行う際、FFT波形のピーク検出を行わなければなりません。ノイズを取り、大まかなピークの検出をし、演算によるPDAへの負荷を抑えたピーク検出のサブVIを作成しました。
[4]グラフ表示
PDAのグラフ表示器は、グリッド線の表示機能が無い為、グリッド線用に1次元数値配列を用意し、これを計測データと合成し、表示することで、グリッド線を表示できるようにしました。また、液晶の表示画素数に合わせて、波形データの間引きをすることによって表示時間を短縮しました。
[5]データの保存
保存する計測データは、シリアル通信で送られてきたバイナリデータにPDAでの解析結果を追加しています。バイナリデータをそのまま保存するのは、ファイルのサイズを小さくして、データの転送時間を短縮し、より多くのファイルを保存できるようにする為です。ファイルはSDカードに保存します。

データ集録・解析ソフトウェアの計測画面
図2 データ集録・解析ソフトウェアの計測画面

(イ)PC用のデータ変換ソフトウェア及びデータ解析ソフトウェア

集録・保存したデータをPC上で解析するためのデータ変換ソフトウェアは、計測データをCSV形式に変換します。データ解析ソフトウェアでは変換されたCSV形式ファイルを読込み、PDAのアプリケーションと同じデータ解析を行い、画面に表示します。この2つのソフトウェアの作成にはLabVIEW 7.1を使用しました。

まとめ

今回、マイコンからPDAとLabVIEW PDA Module for Pocket PCのアプリケーションに移行したことにより以下の点が改善されました。

  • FFT処理をマイコンに行わせた場合に比べ、処理に掛かる時間を短縮出来ました。(約1/4)
  • FFT波形の確認がその場で可能(PDAのある今回の測定装置で実現)になりました。
  • 測定装置にPDAを組み込むことにより、本体のみで計測データの保存が可能になりました。以前は測定装置に複数のデータを保存するのが出来なかった為、測定装置本体とノートPCを接続した状態で操作する必要があり、計測の度に手動で保存していました。今回はPDAにデータを手動で保存する機能と、自動で保存する機能の選択を可能にしました。
  • 測定装置のマイコンのパラメータ変更がその場で可能になりました。上記のデータの保存同様、前回の装置のパラメータ変更にはノートPCが必要でしたが、今回はPDAから変更が可能になりました。
  • バッテリ放電状態になった場合、通常メモリのデータは消滅しますが、アプリケーションをフラッシュメモリ(iPAQ File Store)に保存し、フラッシュメモリ上で起動することで、フラッシュメモリ上のアプリケーションは消滅しません。
  • LabVIEW PDA Module for Pocket PCを使用することにより、開発時間の短縮が可能になりました。


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