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事例 : 超伝導磁気浮上コイルの制御とライブカメラにて遠隔制御

背景

核融合科学研究所殿にて超伝導磁気コイルを浮上させることの実験を行っていました。この実験は、アナログ回路を構築して実際に駆動して動いていました。このシステムをPCにて置き換えることが最初のステップでした。さらに遠隔制御ができるようなシステムが存在するならば、その場所にいなくても浮上しているコイルを見ることが出来る、また制御することが出来るということを構築していくことになりました。
核融合科学研究所は、核融合プラズマの学理と応用を研究するための国の機関です。この実験を行われていた柳長門先生*1の協力を頂き、このシステムを築けあげました。

課題

1)超伝導磁気コイルが浮いている時の高さの測定。
2)浮いている時の高さの測定値を用いてPID制御をするためのソフトウエア作成。高さから出力する電流値を求める。PID制御は100Hz以上のアップデートレートで計算して電流を出力する。
3)超伝導磁気コイルを浮上させるための電流出力ドライバの作成。
4)超伝導磁気コイルが浮上しているときのPIDデータ保存。
5)遠隔制御のためのソフトウエア作成。チャットソフト作成。
6)遠隔モニタリングが出来るようにカメラを制御。コイル浮上時の画像保存。

Fig1 超伝導コイル浮上中
Fig1 超伝導コイル浮上中
Fig2 電流ドライバ
Fig2 電流ドライバ

ソリューション

1.ハードウェアシステム概要

(ア)PID制御部分

超伝導磁気コイルの高さを測るために用いられたのがレーザー変位計です。高さが電圧として変換されて出力されてきますので、アナログ集録ボード、PCI-6025Eを使用しました。また自社製電流ドライバにDAQボードより電圧出力をし、超伝導磁気コイルが浮上するように高電流を出力します。最大で50Aまで、1V出力電圧に対して10Aの電流を出力するようになっています。電流ドライバから出力された電流はコイルの上にある電磁石に対して出力されます。電磁石はコイル状になっていて、このコイルから発生される磁気を制御することによって超伝導コイルが浮くようになっています。このPID制御は100Hz以上で制御しなくてはならないため、画像処理やDataSocket技術を必要とする遠隔制御部分は同時にはできないことが実験より分かったため、PC1台をPID制御だけのために用意することを決定しました。

(イ)遠隔制御、ライブカメラ部分

浮上しているコイルをアナログカメラとIMAQ-1411で取り込み、モノクロとカラー両方で見られるようにしました。集録した画像を遠隔にあるPCへ送るために高速通信が必要なため、1Gbit転送ができるEthernetを用いて実現しました。

図1がハードウエア構成となります。

図1 ハードウエア構成
図1 ハードウエア構成

2.ソフトウエア

(ア)PID制御用PC

全体のシステムとして使用したプログラミングソフトウエアはLabVIEW 6iです。アナログ入力の関数を用いてレーザー変位計より出力される電圧を集録します。集録したデータをPID制御のプログラムを通して電流ドライバに送る電圧を計算します。計算された電圧値はアナログ出力のチャネルを使って電流ドライバへと出力されます。PID制御の画面では、コイルの目標位置、PIDパラメータ、ファイル保存フォルダ、スキャンレートなどの設定が可能です。目標位置を変えることによってコイルの浮上している位置を変えることができます。PIDパラメータでは、ゲインやフィルタなどの設定を行い、実際にコイルが浮上する状態を作り出します。図2参照

(イ)コントロールPC

このPCでは、画像集録と制御を主に行います。PID制御用PCは実行した後は全く操作せずに駆動するようになっています。コントロールPCよりPIDのパラメータを設定することによってコイルの浮上する高さが変化するように実現しました。また、コントロールPCにはアナログカメラと画像集録ボードIMAQ-1411が搭載されており、コイルが浮上しているところを遠隔コントロールPCへと送ることが可能です。取り込んだ画像はDataSocketを使って遠隔コントロールPCへと送ります。これは、まず画像を配列データにすることが必要です。そして、遠隔コントロールPCにてその配列を受け取って、また画像へと変換します。DataSocketでは画像データのように扱うことが出来ないアイテムも配列に変換することによって共有することができるのです。図3参照

(ウ)遠隔コントロールPC

遠隔モニタと制御ができるPCです。コントロールPCより送られてきた画像を見ることができます。そして、PIDパラメータ設定などを遠隔から制御することができます。遠隔より浮上コイルの高さを変えることも可能です。

図2 PID制御用ソフト
図2 PID制御用ソフト
図3 コントロールPC用ソフト
図3 コントロールPC用ソフト

ソフトウエアにはこれだけではなく、遠隔操作には便利である機能を追加しました。遠隔と実験現場間を電話等で通信するのではなく、チャットソフトを使用して連絡を取れるようにしました。このチャットソフトは、コントロールPCと遠隔コントロールPC間で使用するようになっています。両方の発言をリアルタイムで表示し、文字を使って会話することができます。チャットソフトはDataSocketの技術をフル活用して作成されました。これによってどちらのPCが制御権を持つかというのを明確にすることができます。両方でPIDのパラメータを設定するのでは複雑になるため、どちらかが制御するという形を取りました。

まとめ

浮上コイルの制御はアナログ回路で行われていた時よりはかなり精度の高いものとなりました。コイルの高さをLabVIEWのスライド制御器を使って上下するとリップルを起こして上下しながらその指定された高さへ行くというのではなく、上下した通りにコイルは浮上します。また、指定位置=0から指定位置=1に数値入力したときも、全く上下運動はなく静止します。これは、PIDゲインの設定や計算などの仕方で変わりますが、PC制御にすることによって簡単にゲインやフィルタ等の設定を変えることができます。アナログ回路の時よりは応答速度や反応が速くなったという事です。
また今回はPCを2台に分けて構築しましたが、これはアナログ入力速度が5000Hz以上とアナログ出力が100Hz以上のアップデートレートを同時に行い、また画像を同時に集録するのではひとつのPCでは無理であったためです。PCをひとつにすることによって、上記のスピードを保つことが出来ました。PCを二つに分けるのではなく、PXI-RTを用いて新しい機能のリアルタイムIMAQとRT対応のDataSocketによってコントロールPCとPID制御PCをひとつにすることが実現出来るのではないかと思います。

*1 柳長門 先生 核融合科学研究所 大型ヘリカル研究部 装置技術研究系 超伝導コイル開発第一研究部門



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